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ポスト量子暗号への対応期限の前倒し:高度な暗号攻撃に備える新たな大統領令

もはや仮説ではない量子の脅威

2026年6月22日、大統領は2つの大統領令に署名しました。これらは、量子時代が急速に近付いており、対策が求められていることを示すものです。1つ目の「高度な暗号攻撃から国家を守る」(EO 14412)は、連邦政府によるポスト量子暗号への移行を加速させます。2つ目の「量子イノベーションの新たなフロンティアを切り拓く」(EO 14413)は、研究、商業化、サプライ チェーンのレジリエンス、人材育成を網羅する政府全体の量子戦略を策定するものです。

EO 14412では、明確な期限が定められています。連邦政府機関は、2030年12月31日までに最も機密性の高いシステムで使用する鍵確立をポスト量子暗号(PQC)に移行し、2031年12月31日までにデジタル署名もPQCに移行することが義務付けられています。また、この大統領令は連邦調達規制(FAR)評議会に対し、対象となる連邦政府契約者に対して、2030年12月31日までにPQCアルゴリズムを含む米国国立標準技術研究所(NIST)の連邦情報処理基準(FIPS)に順守することを義務付ける規則案を策定するよう求めています。すべての政府機関は、署名から30日以内にPQC移行責任者を任命しなければなりません。

これらの大統領令の根底には、「収集しておいて後で復号する」(HNDL)と呼ばれる、広く認識されている脅威が存在します。国家レベルの攻撃者は現在、政府機関や組織の暗号化されたデータを積極的に窃取して保存し、十分な性能を備えた量子コンピューターが利用可能になった時点で復号することを狙っています。収集対象となるデータには、認証情報、知的財産、国家安全保障に関する情報が含まれ、数十年にわたって価値を持ち続ける可能性があります。

どの政府機関や組織のセキュリティ部門にとっても、移行するかどうかが問題ではなく、どのようにどれだけ速く移行するかが問われています。

法律と基準のフレームワーク

サイバーセキュリティに関する大統領令(EO 14412)は、組織が対応すべき、より広範な法的・技術的フレームワークの中に位置付けられています。

量子コンピューティング サイバーセキュリティ準備法(P.L. 117–260)

この法律は2022年12月に制定され、連邦政府機関に対し、暗号資産を把握するためのインベントリーを作成することが義務付けられています。具体的には、どの暗号化が使用されているか、どこに保管されているか、そしてどのシステムが量子攻撃によるリスクに最もさらされているかを把握する必要があります。見えないものは移行できません。

OMB M–26–15:ポスト量子暗号への移行の実施

EO 14412への署名から2日後、OMBは覚書M-26-15を発行し、大統領令で定められた期限を5段階の移行フレームワークに具体化しました。各政府機関は120日以内にPQC移行計画をOMBに提出しなければなりません。この覚書では、暗号資産の自動インベントリーと検出ツールの導入、ゼロトラスト アーキテクチャーへのPQC統合、そしてFedRAMP認可のクラウド サービス プロバイダーとのPQC移行責任を共有するための連携が求められています。M-26-15は、PQCを持続可能なゼロトラスト アーキテクチャーの基盤となる要素として位置付けており、耐量子暗号なしでは、組織は成熟したゼロトラスト態勢を実現できないことを強調しています。

NISTのPQC規格

NISTは、鍵確立に用いる量子耐性アルゴリズムであるML-KEM (モジュール格子ベース鍵カプセル化メカニズム)を標準化したFIPS 203を正式に策定しました。これは大統領令が定める当面の2030年の期限に対応する規格であり、Zscalerが現在提供しているPQC機能の基盤となっています。NISTはまた、大統領令で定める2031年の期限に対応するポスト量子デジタル署名の標準も正式に策定しています。

これらの要件を総合すると、明確な運用上の指針が示されています。次の問題は、これらの期限が求める規模とスピードでPQC機能を提供できるセキュリティ アーキテクチャーが何なのかということです。

Zscalerの取り組み:目的に合わせた対応

大統領令が署名されるはるか以前から、Zscalerはポスト量子暗号技術の構築に投資してきました。これは、大統領令が定める当面の2030年までの鍵確立要件と、政府機関や組織が直面する運用上の現実に対応するためのものです。ここでは、まず施行される鍵確立要件に対して、Zscalerのプラットフォームがどのように対応するのかを解説します。

PQCの可視化 - 自社の暗号化態勢の把握

対応:量子コンピューティング サイバーセキュリティ準備法 | 大統領令の要件:暗号資産のインベントリーとリスク評価

PQCへの準拠に向けた第一歩は、現在の暗号フットプリントを理解することです。従来の鍵確立や、将来的に量子攻撃に対して脆弱になるデジタル署名に依存しているすべてのシステム、アプリケーション、接続を特定する必要があります。

OMB M-26-15では、連邦政府規模において手作業によるインベントリーのプロセスは不十分であることが認識されています。Zscalerのインライン アーキテクチャーはこの問題に直接対応します。実際のトラフィックに基づいて暗号を自動かつ継続的に検出し、ユーザー、デバイス、特定のトランザクションにおける暗号化機能を正確に可視化します。

Zscalerは、Zscaler Zero Trust Exchange内の専用ダッシュボードとしてPQC Visibility Reportを提供しています。これにより、セキュリティ部門は以下の情報をリアルタイムで把握できます。

  • PQCによる鍵確立でTLS接続を開始しているユーザーとデバイス
  • PQCを導入できない従来のTLSプロトコル バージョンの使用状況
  • 従来の鍵確立が依然として使用されており、最も露出している場所
  • 移行の優先順位付けに役立つ、組織全体のトラフィックの内訳

関連するすべての情報は詳細なトランザクション ログで容易に入手可能であり、ZscalerのNanologサービスを通じてあらゆる規模でストリーミングできます。これにより、組織は組織全体のすべての暗号化の依存関係を体系的に整理したインベントリーである、暗号明細書(CryptoBOM)を作成できます。ZscalerはHCLTechと提携し、サービスによる暗号資産検出プロジェクトを提供しています。これにより、組織はCryptoBOMを作成して運用化し、包括的なPQC移行ロードマップの基盤として活用できます。

ZscalerのPQC Visibility Reportは、準備法とM-26-15の両方が移行の基盤として求めている、実際のインベントリーを組織に提供します。

PQCの可視化レポート

インラインPQCインスペクション - 転送中トラフィックの保護

対応:大統領令の要件:高価値資産と影響の大きいシステムにおける鍵確立をPQCへ移行 | 標準:NIST FIPS 203 (ML-KEM)

2026年2月、ZscalerはインラインでのPQCトラフィック検査を完全に提供する初のセキュリティ サービス エッジ(SSE)プロバイダーとなりました。これは、組織や政府機関のセキュリティ インフラで実現可能なことを大きく変える画期的な機能です。

仕組み

Zscaler Zero Trust Exchangeはユーザーとインターネットの間にインラインで配置され、「量子安全な仲介者」、つまり暗号の翻訳者として以下のように機能します。

  1. 復号:Zscalerは量子安全な鍵確立(ECDHEと組み合わせたML-KEM/FIPS 203のハイブリッド方式)で保護されたトラフィックを含む、インバウンドTLSトラフィックを傍受および復号します。
  2. 検査:完全なディープ コンテンツ インスペクションを適用し、脅威検出、情報漏洩防止、URLフィルタリング、ポリシーの施行を行います。
  3. 再暗号化:トラフィックは適切なアルゴリズムで再暗号化してから、宛先に転送します。Zscalerはこの機能に対応しているサーバーにおいて量子安全な鍵確立を使用します。
Zscalerによる量子対応検査

このアーキテクチャーは、組織におけるPQC移行で最も難しい課題の1つである、従来のサーバーとの互換性の問題を解決します。多くのバックエンド サーバーやSaaSアプリケーションは、まだPQCによる鍵確立を導入していません。ZscalerのZero Trust Exchangeはこのギャップを解消し、最新のクライアントとPQCで保護された接続を確立しつつ、従来のサーバーと互換性のあるこれまでのTLS接続を維持します。これにより、組織はエコシステム内のすべてのサーバーやアプリケーションがアップグレードされるのを待つことなく、今すぐHNDL攻撃からユーザーを保護し始めることができます。

TLS 1.3とハイブリッド鍵交換

Zscalerのインライン検査エンジンは、従来の一時鍵を用いた楕円曲線ディフィー・ヘルマン鍵共有(ECDHE)とML-KEM (FIPS 203)を組み合わせたハイブリッドのPQC鍵確立をサポートしています。このハイブリッド方式は、純粋なPQCへの直接移行に比べて安全かつ慎重であると広く認識されており、多層防御を提供します。適切に実装されたハイブリッド方式を侵害するには、従来のアルゴリズムとPQCアルゴリズムの両方を破る必要があります。最新のWebブラウザー(Chrome、Edge、Firefox、Safari)との完全互換性を提供し、インターネット エンジニアリング タスクフォース(IETF)の現在の推奨事項に従っています。

OMB M-26-15は、ハイブリッド アーキテクチャーを有効な移行モデルとして認めており、ネットワーク レベルでPQCを導入するための基盤としてTLS 1.3を指定しています。すべての政府機関に対して、2030年1月2日までの導入期限としています。

今後の予定:暗号化ポリシー プロファイル

PQCの要件はすべて同じではありません。IETFは、インターネット上で幅広い互換性を確保するために、ML-KEMと従来のECDHEを組み合わせたハイブリッド鍵交換方式を推奨しています。一方、NISTのCNSA 2.0スイートは、国家安全保障システムにおいて純粋なML-KEMを採用することを求めており、従来の要素を完全に排除しています。

Zscalerは現在、暗号化ポリシー プロファイルの開発を進めています。これにより、セキュリティ部門は、どの暗号標準をどこで施行するかをきめ細かく制御できるようになります。管理者は、一般的な組織のトラフィックにはハイブリッド鍵交換を義務付ける一方、CNSA 2.0の要件に該当する接続には純粋なML-KEMを義務付けるポリシーを定義できるようになります。ポリシーは、ユーザー グループ、アプリケーション、データ分類、またはコンプライアンス体制によって適用範囲を設定できます。

大統領令で定められた2030年の期限とCNSA 2.0のガイドラインの両方に従う連邦政府機関の顧客にとって、この柔軟性は不可欠です。これにより、組織全体に画一的なアプローチを強制することなく、1つのプラットフォームで多様な暗号化要件を満たすことが可能になります。

ゼロトラスト アーキテクチャーが適切な基盤である理由

ZscalerのPQC機能は、世界最大のセキュリティ クラウドであるZscaler Zero Trust Exchangeにネイティブに組み込まれています。このアーキテクチャー上のメリットは、PQCへの移行において重要です。

  • インラインで動作する設計:すべてのユーザー接続がZscalerを経由するため、エンドポイント エージェントやネットワークの再構築を必要とすることなくPQCインスペクションを一律に適用します。
  • クラウドならではのスピードでの拡張性:Zero Trust Exchangeは1日あたり数千億件のトランザクションを処理しており、ユーザー エクスペリエンスを低下させることなくPQCアルゴリズムによる計算負荷の処理に必要な能力を提供します。
  • ポリシー主導型:セキュリティ部門は、ユーザー、グループ、アプリケーション、データ分類ごとに適用範囲を決めて量子安全なTLS要件を選択的に施行でき、段階的かつ制御された移行を実現します。
  • 統一された可視性:従来のトラフィックと量子安全なトラフィックの両方が単一の画面で提供されるため、移行期間中に死角は発生しません。
  • 暗号の機動性:PQC研究は現在も活発なテーマであり、NISTは追加アルゴリズムの標準化に取り組んでいます。Zscalerクラウドは常に最新のセキュリティ ガイドラインを採用しており、PQCに関する推奨アプローチが変更された際にも予期しない混乱を顧客が心配する必要はありません。

結論:2030年まで待たずに今すぐ行動

2030年という期限はまだ先のように感じられるかもしれません。しかし、HNDLの脅威はまさに今、現実となっています。現在、従来の鍵交換方式で確立されたチャネルを介して送信されるデータは、量子コンピューターの実用化が組織の準備よりも先に進むと見込んでいる攻撃者によって収集されています。移行が1日遅れるごとに、さらなるデータがリスクにさらされることになります。

Zscalerが政府機関や組織に伝えたいメッセージはシンプルです。保護を始めるのを待つ必要はありません。自社の暗号情報の露出状況を確認し、量子安全なトラフィックをインラインで検査し、ネットワーク ファブリックを保護するためのツールは、現在利用可能です。PQCへの準拠に向けた取り組みはゼロトラストを通じて実現され、Zscalerはその道のりを皆さまとともに歩む準備ができています。

Zscalerのポスト量子暗号ソリューションの詳細は、PQC準備状況評価を依頼するか、Zscalerテナント内のPQC Visibility Reportをご覧ください。今後のブログでは、FedRAMPと戦争省の組織を対象としたPQC移行に関する推奨事項を取り上げる予定です。

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