3,000名
全従業員への大規模展開
50%
ヘルブデスクでの対応時間が約半分に減少
1/6に短縮
100名規模の新規拠点をスピード展開
課題
ランサムウェア攻撃が巧妙化する中、顧客の機密情報を扱う立場としてセキュリティ強化が急務に
拠点ごとのファイアウォール管理が複雑化し、人員不足による運用管理の遅れがセキュリティリスクに
コロナ禍でのリモートワーク移行で、VPN経由の通信負荷が増大し、既存インフラの限界が顕在化、またVPN接続時の複雑な認証作業がユーザーの負担だった
採用したアプローチ
Windows 11へのPCリプレースと並行して展開。IT部門での事前検証、200台規模のパイロット検証を経て、2024年7月から9月の3カ月間で約20拠点・3,000人への展開を完了
移行期間中はVPNとの並行運用を維持し、問題発生時のバックアップ体制を確保
既存アプリケーションの大半がSaaS化されていたことや導入パートナーの協力体制により迅速な展開が実現
成果
ヘルプデスクの対応時間が半減し、セキュリティポリシーの一元管理とユーザー行動の可視化、利便性が向上
PCの稼働状況やライセンス使用状況の把握が容易になり、IT資産管理の最適化にも貢献
新拠点開設時のインフラ構築所要期間が3〜6カ月から1カ月に短縮。M&Aの際のシステム展開もスムーズに
株式会社ADKホールディングス の概要
データとテクノロジーを駆使し、顧客体験を重視した統合型マーケティングを提供している総合広告会社
業界:
サービス
本社:
東京都港区虎ノ門1丁目23番1号 虎ノ門ヒルズ森タワー
Size:
約2,600名(連結)
事例の詳細
コミュニケーションを軸とした総合広告会社の株式会社ADKホールディングスが、ITインフラの刷新に踏み切った。きっかけは身近な企業で頻発したランサムウェア被害。グループ内でクライアントの機密情報を扱う同社にとって、他人事ではない危機感が芽生えた。また、拠点単位のセキュリティ対策では、M&Aや拠点新設の度に新たなファイアウォールの設置が必要となり、人員不足による展開の遅れや運用管理が後手に回ること等がリスクを高めていた。そこで、クラウドベースで一元管理できるZscalerの導入を決断。Windows 11への移行と並行して約20拠点、3,000人規模の大規模展開を実現し、セキュリティ強化と運用効率の向上を同時に達成した。
歴史ある日本企業ならではの 旧態依然とした意識がはびこる
株式会社ADKホールディングス(以下「ADKグループ」)は、2019年よりマーケティング事業、クリエイティブ事業、コンテンツ事業など、プロフェッショナル・ユニットが集積する企業グループとして、4社で構成されるホールディングス体制を敷いている。
国内では東京本社と7つの支社および4つのオフィスで日本全国をカバーしており、部門、職種、拠点等の垣根を越えてベストチームを結成し、クライアント企業の課題に貢献している。
そんなADKだが、IT戦略は「典型的なSIer依存体質企業のITシステムに対する考え方」だった。株式会社ADKホールディングス グループ執行役員CIOの柴﨑 貴志氏は「広告・マーケティング事業はB2Bビジネスでありながら個々のクライアントニーズに合わせて柔軟なサービス提供を行う傾向が強く、また結果として社内システムへの依存度が低くなるため一部の部門を除いて『ITでビジネスを変革する』といった考え方は浸透しにくい状況でした。」と説明する。
とはいえ、近年のデジタル化やガバナンス強化の流れを受け、社内でもITインフラの見直しやセキュリティ体制の強化を求める機運が高まってきた。大きなきっかけとなったのは、国内の様々な大手企業で発生したランサムウェア被害だ。
これらのセキュリティインシデントはADKグループにとっては対岸の火事ではなかった。ADKグループもクライアントの新商品情報や新キャンペーン情報など機密性の高い情報を扱っており、またグループ内にアニメ制作会社を抱えている。そこで、ITインフラ全体のモダナイズと同時にセキュリティ対策の高度化も実施することを決めた。同社グループIT本部ITプラットフォーム局 局長の奥山 真氏は、当時抱えていた課題を以下のように振り返る。
「従来のITインフラは、各拠点に設置したファイアウォールを介して本社のコーポレートネットワークに接続する構成でした。そのため、拠点の新規開設やM&Aによる企業統合が進む中で、新たなファイアウォールの設置が必要となり、拠点間のファイアウォール設定が分散化している点でセキュリティリスクを高める要因にもなっていました」。
さらにコロナ禍による全面リモートワークへの移行が、既存インフラの限界を顕在化させていた。全従業員がTeamsなどのビデオ会議システムを使用するようになり、トラフィックが想定を大きく上回ったのだ。例えば、10人の会議で1人が不在だと、残り9人全員がビデオ通信を使うため、VPN経由の接続と相まってネットワーク負荷が著しく増大。とはいえ、帯域の増強はコストと人数のバランスを考えると非効率だった。
約20拠点3,000ユーザーへの展開を 3カ月で完了
これらの課題を解決するために導入したのがZscalerである。決め手となったのは、Zscalerのライセンスモデルとサポート体制、そしてクラウドベースで一元管理できる操作性だ。3,000人強の従業員を擁し、1人1台PCを配布する環境では拠点ベースの課金モデルや従量課金モデルではコストが跳ね上がる。
柴﨑氏は「PoC(概念実証)に約3カ月かけました。その間、Zscalerの担当者はADKの環境での導入効果や運用時のコストを丁寧に説明してくれました。導入前の支援体制も万全で、エンジニアが迅速に対応してくれたのも大きなポイントでした」と語る。奥山氏も「技術面ではインターネットの大規模中継拠点(IX)への直接接続によるパフォーマンス向上や、Microsoft Azure、AWSとの親和性、クラウドベースの一元管理が魅力でした。それまではインシデント発生時にもログがないため判断が難しかったのですが、Zscalerであれば当然ログが取れ、しかも見やすいことも有り難かったです」と評価する。
導入プロジェクトは実質10カ月で完了した。具体的なプロセスはIT部門での事前検証からスタートし、200台規模のパイロット検証を経て、本格展開へと進んだ。社内ユーザー体験を重要視し、Zscalerの展開に併せて、Windows 11へのPCリプレースを実施したことも追い風となり、2024年7月から9月の3カ月という短期間で約20拠点、3,000人のユーザーへの展開が完了した。
セキュリティ強化と 管理効率向上を同時に実現
Zscalerの導入で、業務効率は大幅に改善した。同社情報セキュリティ局 セキュリティマネジメントグループの末 佳祐氏は「常駐業務時も社内と同一の作業環境が整い、シングルサインオンによる簡単なアクセスが実現したことで、VPN接続時の複雑な認証作業が不要になりました。ユーザーの利便性が飛躍的に向上し、評判も上々です」と効果を語る。
拠点展開のスピードも格段に高速化した。例えば、従来は専用回線設置に3カ月から半年の期間を要していたBPO(Business Process Outsourcing)センターの増設に、1カ月で対応できるようになった。柴﨑氏は「M&Aやジョイントベンチャーの設立時も、システム統合がスムーズです」と説明する。
さらにネットワーク構成がシンプルになったことで、トラブルシューティングも容易になった。奥山氏によると、リモート接続に関するヘルプデスクでの対応時間は導入前の半分程度に減少したという。
セキュリティ面でのユーザー行動の可視化が進み、細かなセキュリティ制御ができるようになったこともメリットだ。末氏はその効果を次のように説明する。
「ファイル共有サイトでのダウンロードのみを許可するなど、きめ細かなポリシー設定や、野良SaaSの特定と管理ができるようになりました。これにより、ITプラットフォーム局も情報セキュリティ局も定常的なタスクに注力できるようになりました」。
クラウドネイティブな 環境活用を考える
今後は導入で得られた知見を活かし、業務システムの改革を加速させる予定である。具体的にはサーバーレス化やコンテナ化の推進、自社開発環境の整備などを実施し、事業向けデジタル基盤との統合を目指す。
柴﨑氏はZscalerの導入を検討しているIT担当者に対し「まず自社の課題を明確化すること」と指摘しつつ、次のようにアドバイスする。
「検証に十分な時間を確保し、トラフィックの特定や既存アプリケーションの洗い出しを行う。ユーザー体験を重視した計画を立てる。そして何よりも大事なのは意識の転換です。『拠点を守る』という従来の概念から脱却し、クラウドネイティブな環境活用へと舵を切る。それが単なるインフラの変更ではなく、セキュリティとユーザビリティの両立、そしてビジネスの俊敏性を高めることにつながります」。

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