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SD-WANとは

ソフトウェア定義型広域ネットワーク(SD-WAN)は、ポリシーやリアルタイム分析に基づいてトラフィックをインテリジェントにルーティングすることで、グローバルに分散された拠点どうしを接続する手法です。これにより、WAN接続が最適化され、アプリケーションのパフォーマンスや信頼性が高まります。その結果、組織はコストを削減しながらセキュリティを強化し、急速に変化する現代のIT環境に求められる俊敏性を損なうことなく、ネットワーク運用を合理化できます。

SD-WANの仕組み:SD-WANアーキテクチャー

SD-WANテクノロジーの本質は、物理インフラとネットワーク トラフィックの制御メカニズムの間に抽象化レイヤーを構築する点にあります。この分離により、集中型のポリシー管理が可能になり、管理者は構成変更をすべての拠点に迅速に反映できるようになります。SD-WANは、ブロードバンド回線、4G/5G回線、マルチプロトコル ラベル スイッチング(MPLS)回線などの複数の通信手段を使い分けながら、アプリケーションごとのニーズに応じてトラフィックをルーティングする柔軟性を提供します。これにより、動的かつコスト効率に優れたWAN環境を実現し、パフォーマンス上の優先事項とセキュリティ上の重要事項の間でバランスを調整できるようになります。

SD-WANの仕組みについて理解を深めるには、支社オフィスなどの各拠点が、中央のコントローラーが監視する仮想トンネルで接続されたものと考えるとよいでしょう。コントローラーはトラフィックの流れをリアルタイムで監視し、トラフィックの種類ごとに最適な経路を判断します。このアプローチにより、MPLSはもはや重要なデータを運ぶ唯一の手段ではなくなり、他の回線も同様に有効な選択肢として活用し、負荷の高いアプリケーションやワークロードの変化に対するネットワーク レジリエンスを維持、さらには改善できるようになります。

SD-WANのコア コンポーネント

包括的なSD-WANアーキテクチャーを構成する5つの重要要素は以下のとおりです。

  • 集中型のオーケストレーター:ポリシーを管理し、すべての拠点にわたる構成の一貫性を確保します。
  • セキュア エッジ アプライアンス:各拠点に設置され、暗号化トンネルの確立とローカル ポリシーの施行を担います。
  • アプリケーション認識型ルーティング:アプリケーションの種類、ネットワーク状況、定義されたポリシーに基づいて、データ パケットをインテリジェントにルーティングします。
  • 分析とレポート機能:ネットワーク パフォーマンスとセキュリティ態勢に関するインサイトを提供し、将来の意思決定の最適化を支援します。
  • クラウド ゲートウェイ:SD-WANのメリットをクラウドベースのリソースに拡張し、SaaSおよびIaaSアプリケーションのパフォーマンスを最適化します。

SD-WANのメリット

SD-WANは、組織におけるネットワーク インフラの変革と、パフォーマンスやコスト効率の向上を支援します。以下は、ソフトウェア定義型WANソリューションを導入することで得られる5つの主なメリットです。

  • アプリケーションのエクスペリエンス向上:重要なアプリケーションを優先し、ピーク時でも安定した動作を実現します。
  • 運用コストの削減:ブロードバンド回線の活用により柔軟性を提供し、高額なMPLS接続への依存を低減します。
  • 俊敏性と拡張性の向上:集中型のプロビジョニングにより、新しい拠点の展開や構成変更を迅速に行えます。
  • セキュリティ態勢の強化:データをエンドツーエンドで暗号化し、高度なセキュリティ サービスとシームレスに統合します。
  • ネットワーク運用の効率化:単一のインターフェイスによって管理を簡素化し、定型的な作業を自動化します。

SD-WANソリューションの種類

SD-WANの実装形態は多岐にわたり、各組織のニーズや既存インフラへの投資状況に応じて柔軟に対応できます。以下の展開モデルは、具体的なビジネス上の優先事項、技術的要件、運用上の方針に沿った固有のメリットを提供します。

  • アプライアンス型SD-WAN:各拠点に専用のハードウェアを設置することで、安定したパフォーマンスと包括的なローカル処理機能を提供します。
  • クラウド型SD-WAN:制御プレーンや多くのネットワーク機能をクラウド インフラに移行することで、広範囲にわたるオンプレミス機器の設置を不要にし、迅速な展開を可能にするとともに、優れた拡張性を実現します。
  • ハイブリッド型SD-WAN:アプライアンス型とクラウド型の要素を組み合わせることで、両者の強みを活かした柔軟なアーキテクチャーを構築します。重要拠点ではオンプレミス機器の高い信頼性を活かしつつ、小規模な拠点や一時的な接続にはクラウドベースのサービスを利用することで、変化するビジネス要件に柔軟に対応できるバランスの取れたソリューションが実現します。

SD-WANと従来型WANの比較

以下は、最新のSD-WANソリューションと従来型WANの主な違いを示す表です。

比較

SD-WAN

アーキテクチャー:

ソフトウェア定義、集中管理

 

トラフィック管理:

リアルタイムの状況に基づく動的な経路選択

 

拡張性:

ゼロタッチ プロビジョニングによる迅速な拡張が可能

 

コスト モデル:

コスト効率向上のために低コストのインターネット回線を活用

 

セキュリティ統合:

組み込み(アプリケーション認識型の検査機能を含む場合が多い)

従来型のWAN

アーキテクチャー:

ハードウェア中心、デバイス単位での構成

 

トラフィック管理:

柔軟性に乏しい静的なルーティング

 

拡張性:

展開に時間がかかり、拠点ごとに手動で対応

 

コスト モデル:

高コストの専用回線に大きく依存

 

セキュリティ統合:

ファイアウォールはアドオンで、セキュリティ統合は限定的

SD-WANとMPLSの違い

エンタープライズ向けネットワーク サービスでは長年にわたりMPLSが基盤となっていましたが、SD-WANによって接続の構築と維持のあり方が再定義されています。以下は、SD-WANとMPLSの比較表です。

比較

SD-WAN

プロビジョニング:

集中管理での迅速な展開が可能

 

帯域幅の柔軟性:

ブロードバンド回線や4G/5G回線を簡単に追加してボトルネックを解消することが可能

 

パフォーマンス監視:

リアルタイム分析によってトラフィックを最適な経路にルーティング

 

コスト構造:

低コスト回線と従量課金モデルの組み合わせ

 

セキュリティ統合:

暗号化と自動化された脅威対策

MPLS

プロビジョニング:

セットアップが複雑でキャリアに依存

 

帯域幅の柔軟性:

あらかじめ決められた水準の帯域幅

 

パフォーマンス監視:

基本的なサービス品質(QoS)と限定的な可視性

 

コスト構造:

高額で柔軟性に欠ける契約形態が一般的

 

セキュリティ統合:

多くの場合、別個のセキュリティ レイヤーに依存

SD-WANの5つの主なユース ケース

SD-WANは、多様な課題に対応する主流のソリューションへと進化しています。以下は、SD-WANが真価を発揮する5つの代表的なシナリオです。

  1. 小売チェーン:新店舗のネットワーク接続を迅速に構築、刷新し、一貫したパフォーマンスと安全な決済サービスを実現します。
  2. グローバル企業:大陸をまたいでWANアーキテクチャーを標準化し、レイテンシーを削減するとともに、地理的に分散した部門間のコラボレーションを強化します。
  3. 医療機関:機密性の高い患者データを保護しながら、遠隔医療プラットフォームやクラウドベースの診療記録への迅速なアクセスを実現します。
  4. 金融機関:インテリジェントなトラフィック ルーティングと自動冗長化でリアルタイム取引をサポートするとともに、ダウンタイムを減らします。
  5. 製造工場:1つの通信経路に障害が起こってもサプライ チェーン管理システムをオンライン状態に維持し、大きな損失をもたらす生産の中断を回避します。

SD-WANプロバイダーを選定する際の検討事項

SD-WANの技術について理解するのと同様に非常に重要なのが、SD-WANパートナーの選定です。以下は、意思決定前に考慮すべき5つの重要な要素です。

  • セキュリティ統合:強力な暗号化、脅威検知、コンプライアンスの機能を提供しているプロバイダーであることを確認します。
  • クラウド対応力:パブリック クラウド環境およびプライベート クラウド環境にシームレスに拡張できるアーキテクチャーを探します。
  • 拡張性と柔軟性:組織の拡大やITニーズの多様化に応じて柔軟に対応できるプロバイダーであることを確かめます。
  • 管理と可視性:直感的なインターフェイスと高度な分析機能を備え、ネットワーク トラフィックを簡単に監視できるソリューションを選ぶようにします。
  • サポート体制と専門性:運用の継続的な成功を支えるカスタマー サービス モデルや技術的な熟練度を評価します。

SD-WANとゼロトラスト

広範な暗黙の信頼を付与することなくコンテキストに応じたアクセスを付与し、継続的な検証を行うことを重視するゼロトラストの原則は、SD-WANの設計思想にも馴染むものです。SD-WANでは、すべてのデータ トラフィックを単一の特権的な経路に集約するのではなく、アイデンティティーやポリシーに基づいて、ユーザーやデバイスを安全にリソースに接続します。拠点の場合、このアプローチによって従来の境界型防御への依存を軽減しながら、接続を近代化します。

SD-WANソリューションとゼロトラストの組み合わせにより、拠点からの接続や地球の裏側にいるローミング ユーザーからの接続など、すべての接続試行が検証されるため、拠点のセキュリティが大幅に強化されます。ゼロトラストを拠点の環境に適用することで、パフォーマンスや俊敏性を維持したまま、本社と同じ厳格なセキュリティ基準でリモートの従業員やIoTデバイスを保護できます。

ゼロトラスト アーキテクチャーは、脅威を動的に検出して隔離するSD-WANの機能を強化します。きめ細かなアクセス制御により、ネットワークはユーザーのコンテキストやデバイス ポスチャー、拠点に基づいてセグメント化されるため、多くのサイバー脅威を軽減できます。また、IT部門はSD-WANがトラフィックをどのようにルーティングしているかを正確に把握し、リアルタイムで異常に対応することが可能になります。SD-WANはゼロトラストと統合することで、分散した複雑な運用を管理する現代の組織にスケーラブルで安全なソリューションを提供します。

 拠点のセキュリティにおけるゼロトラストの役割

拠点のセキュリティにおけるゼロトラストの役割

Zscaler Zero Trust SD-WAN

Zscaler Zero Trust SD-WANは、拠点、データ センター、クラウド環境を安全に接続し、従来のネットワークの脆弱性を排除します。ネットワークをあらゆる場所に拡張し、ランサムウェアの拡散を助長し得る従来のSD-WANのアプローチとは異なり、セグメント化されたカフェ型の拠点を構築し、任意のブロードバンド接続を通じてトラフィックをZscalerのプラットフォームに安全に転送します。これにより、VPNや複雑なオーバーレイ ルーティングが不要となり、脅威のラテラル ムーブメントを防ぐことができます。

  • セキュリティの強化:ネットワークではなくアプリケーションへの直接接続を提供することで、脅威のラテラル ムーブメントを防止し、サイト間VPNアーキテクチャーのオープンな攻撃対象領域を排除します。
  • アーキテクチャーの簡素化:社内ファイアウォール、VPN、プロキシ、不要なルーティングの複雑さを排除し、運用コストと管理負荷を軽減します。
  • パフォーマンスの向上:複雑なサイト間VPNをクラウドへの直接接続アーキテクチャーでリプレースすることで、アプリケーションのトラフィック フローとユーザー エクスペリエンスを改善します。
  • 展開の迅速化:ゼロタッチ プロビジョニングと事前定義済みのテンプレートによって拠点の迅速な展開を可能にします。また、異なるIT環境の拠点どうしをすばやく接続できるようにし、M&Aに伴う統合も支援します。

デモをリクエストして、Zscaler Zero Trust SD-WANが脅威のラテラル ムーブメントを排除し、あらゆる場所のユーザー、デバイス、サーバーにゼロトラストを拡張する仕組みをご確認ください。

おすすめのリソース

ゼロトラストSD-WANでラテラル ムーブメントを排除
詳細はこちら
Zscaler Zero Trust SD-WAN
データ シートを読む
Zscaler Zero Trust SD-WAN Lightboard Video

よくある質問

SD-WANは主に支店や拠点向けに設計されています。しかし、一部のソリューションではセキュア リモート アクセス機能も提供されており、従来のオフィス ネットワークの外で働く従業員に対しても一貫したポリシーと信頼性の高い接続を実現します。

はい。SD-WANはアプリケーション認識型ルーティングとサービス品質(QoS)を活用し、動画やVoIPなどの重要なトラフィックを識別、優先、最適化することで、通話品質を改善し、中断を減らします。

SD-WANは詳細な可視化と分析機能を提供することで、IT部門がパフォーマンスの問題やボトルネックを迅速に特定できるようにします。これにより、トラブルシューティングが加速され、ネットワーク問題の平均解決時間が短縮されます。