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マルチクラウド環境でコンプライアンスを簡素化する方法とは
規制が厳しくなるなかで、複数のクラウド環境を使用する組織はデータ保護に関する複雑な課題に直面しています。このような環境でのコンプライアンスの確保にあたり、従来のツールや手動のプロセスに依存すると、違反、罰金、遅延のリスクが高まります。長期的な成功を収めるには、コンプライアンスを簡素化しながら強力かつ一貫したセキュリティを確保する戦略が必要です。
概要
• マルチクラウド コンプライアンスとは、AWSやAzureなどの複数のクラウド プロバイダーの利用にあたり、データ セキュリティとプライバシーに関する法律を順守することです。
• シャドーIT、断片化したツール、絶えず変化するシステムが原因で、マルチクラウド環境におけるコンプライアンス管理は難しくなる場合があります。
• クラウドでは環境の変化が速すぎるため、静的なレビューや手動による監査は機能しません。
• 自動化の活用、明確なセキュリティ ルールの設定、高リスク領域への注力、部門間の連携により、コンプライアンスを簡素化できます。
• ZscalerのDSPMやAI-SPMなどのツールを活用することで、可視化と自動化が可能になり、より少ない労力での規制順守、データ保護、リスク軽減が可能になります。
マルチクラウド コンプライアンスとは
マルチクラウド コンプライアンスは、クラウドにおけるデータ セキュリティとプライバシーに関する法律や業界規制を順守するための複雑なプロセスです。データの保存、アクセス、共有方法に関して、複数のプラットフォーム間で一貫した可視性と制御を確保することが含まれます。
データの取り扱い、データ レジデンシー、暗号化標準などに関するコンプライアンス要件は、地域や業界によって大きく異なります。さらに、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどのクラウド プロバイダー(CSP)には、それぞれ独自の管理ツール、構成、セキュリティ ポリシーがあり、さらなる複雑性の原因となっています。そのため、使用するクラウドが増えるほど、完全なコンプライアンスを維持することは難しくなります。
この課題を解消するには、コンプライアンスの構成、維持、証明をより簡単かつ迅速に行う方法が必要です。
マルチクラウド コンプライアンスの簡素化が重要な理由
コンプライアンス基準を満たせない場合、次のような重要領域で深刻な結果につながる可能性があります。
- 罰金:HIPAAやPCI DSSなどの規制では、違反に対して高額の罰金が科せられます。たとえば、HIPAAでは侵害1件あたり最大71,162米ドル、PCI DSSのコンプライアンス違反では月額最大100,000ドルに上ります(2025年時点)。こうした罰則を考慮しただけでも、コンプライアンスの確保は最優先事項に値します。
- 収益と信頼の低下:データ漏洩や監査の不備、否定的な報道は、顧客の信頼を損ない、ビジネス関係を弱体化させる可能性があります。多くの組織は評判を回復できず、収益の損失や成長機会の減少につながります。
- 業務の中断:コンプライアンス違反が明らかになれば、違反への対応やシステムの改修のために業務を一時停止せざるを得なくなる場合があります。その結果、製品のリリースの遅れやワークフローの中断が発生するなど、組織全体に影響が及ぶ可能性があります。
監視の自動化、可視性の向上、リスクへのプロアクティブな対応によって、違反の可能性を軽減できます。コンプライアンスに先行投資することで、罰金のリスクを軽減するだけでなく、中断なく継続的に成長するための基盤を構築できます。
マルチクラウド コンプライアンスの課題
マルチクラウド コンプライアンスを複雑化させる要因には、具体的にどのようなものがあるのでしょうか?主な課題について詳しく見てみましょう。
共有責任モデル
ほとんどのCSPは共有責任モデルを採用しています。CSPは特定のセキュリティ要素(物理サーバーの保護など)を担当し、顧客はワークロード、ユーザー アクセス、構成の保護に責任を負います。誰が何に責任を負うかが明確でないと、コンプライアンス上の問題につながりかねません。たとえば、CSPはデータベースの設定ミスに気付かないかもしれませんが、それでも顧客はリスクにさらされることになります。
一元的なツールと可視性の欠如
各CSPは独自のコンプライアンス ツールを提供していますが、これらの多くは他のプラットフォームと統合できません。その結果、顧客はすべてのクラウド プラットフォームにわたるコンプライアンスを完全に把握できなくなる可能性があります。一元的な監視ツールがなければ、違反の検出、権限の追跡、データ移動の管理を効率的に行うことは難しくなります。
シャドーITと制御の欠如
マルチクラウド環境において、IT部門はコンプライアンスに違反する可能性のある未承認ツールを把握できないことが頻繁にあります。たとえば、機密データがGDPRやHIPAAの要件を満たさない場所に保存されたり、ツールで処理されたりすることがあります。適切な監視がなければ、シャドーITは攻撃対象領域を拡大させ、コンプライアンス管理の一元化に向けた取り組みの妨げとなります。
絶えず変化するリソース
クラウド リソースは、顧客のニーズの変化に合わせて継続的に拡張または縮小します。したがって、手動での構成レビューや静的な施行など、従来のコンプライアンス手法による取り組みはすぐに意味を失い、効果がありません。制御が変化に追いつかなければ、重要な資産を保護できない可能性があります。
攻撃対象領域の拡大とデータの拡散
マルチクラウド環境では、運用上の課題に加え、攻撃対象領域が拡大します。多くの場合、データは複数の拠点や地域に保存され、リスクが増加します。たとえば、GDPRなどの規制では地域ごとのデータの取り扱いが求められますが、複数の地域にわたるデータ コンプライアンスの追跡は、高度なツールがなければ非常に複雑なプロセスになる可能性があります。
監査の複雑さと重複
マルチクラウド環境では、コンプライアンス監査のために複数のプラットフォームから証拠を収集する必要があります。単一のクラウドと比較すると、必要となる時間とリソースが増加します。コンプライアンス フレームワークが重複または競合する場合、この傾向は特に顕著になります。監査の準備には数か月かかることが多く、ビジネスの他の側面の改善にあてられるはずの時間を割くことになります。
アイデンティティーとアクセス管理(IAM)の不備
各CSPが独自のIAMフレームワークを持っている場合、マルチクラウド環境のアクセス管理が難しくなる可能性があります。プラットフォーム間でロールが大きく異なることもあります。たとえば、あるクラウドで管理者権限を持つユーザーが、別のクラウドではまったく異なる権限を必要とする可能性もあります。一元的なツールがなければ、過剰な権限付与や不正アクセスを回避できず、コンプライアンス上の問題につながる恐れがあります。
進化するAIコンプライアンス規範
AIシステムは大量の機密データを処理しますが、AI規制は未だ発展途上であり、国によって大きな隔たりがあります。適切な監視を行わなければ、AIモデルとマルチクラウドのリソース間でのやりとりに関連して、データ漏洩やアルゴリズムのバイアスが発生したり、監査で不合格になったりするリスクが生まれます。ある法域でトレーニングされたモデルが、異なるコンプライアンス要件の適用される別の地域で展開またはアクセスされる場合、状況は急速に複雑化する可能性があります。
従来の戦略が機能しない理由
従来のコンプライアンス プログラムは、現代のクラウド システムにおける前述の課題に対応できません。従来のプログラムは、手動によるレビュー、基本的なセキュリティ制御、年次監査に重点を置く傾向があります。コンプライアンス部門は、すべてのリソースをマッピングし、規制と照合し、制御が施行されていることを確認します。こうした特定の時点での評価は静的な環境では機能するものの、クラウド環境における変化のスピードには十分に対応できません。
従来の戦略が機能しない理由は以下のようなものです。
- 時間のかかるプロセス:環境が絶えず変化するなかで、複数のCSPにわたる構成の監視を手動で行うことは現実的ではありません。
- 短い有効期限:従来のコンプライアンス レビューでは「ある時点の概況」が提供されますが、動的なクラウド環境において、その情報はすぐに古くなり、死角が発生します。
- 知識のギャップ:規制要件は急速に進化することがあります。最新の知識と専門性がなければ、変化に対応できません。
- AIの複雑さ:従来のプログラムには、AIに関するデータ侵害リスクを効果的に特定、ベンチマーク、分析、修復するための可視性と規模が不足しています。
マルチクラウド コンプライアンスを簡素化する戦略
マルチクラウド戦略に合わせてコンプライアンスを維持するには、労力を抑えながらセキュリティと効率性を向上させる、よりスマートなアプローチが必要です。重要な5つのステップは以下のとおりです。
1. 明確なセキュリティ ポリシーの策定と可視性の向上
まずは、法律や業界標準に準拠した明確なセキュリティ ルールを定義します。これらのルールを、ユーザーやIT部門のガイダンスとなるような実践的なアクションに落とし込みます。また、すべてのクラウド システムにわたるコンプライアンスの監視を簡素化するツールを使用し、死角を見逃さないようにします。
2. コンプライアンス チェックの自動化
自動化ツールは、システムのリスクやコンプライアンス違反、設定ミスをリアルタイムで分析できます。手動によるレビューに頼らずに問題を見つけて修正することで、時間と労力を節約し、違反や侵害のリスクを軽減します。
3. リスクの高い領域への注力
クラウド環境には、相対的にリスクが高い領域が存在します。リスクベースの制御を活用し、優先度の高いセキュリティ脅威を防止します。多額の損失につながる違反のリスクを未然に特定し、最も重大な脅威に最初に対応するようリソースを割り当てます。特にAIアシスタントなどのツールの導入時には、この点を考慮することが重要です。
4. 自動レポート ツールの活用
手動による監査では、重大なエラーの見逃しにつながるほか、監査内容がすぐに古くなります。自動化されたシステムは、監査中や進捗評価に活用できる詳細かつ最新のコンプライアンス レポートを提供します。これらのシステムを導入することで、コンプライアンス部門は書類収集ではなく、システムの改善に集中できるようになります。
5. 部門間の連携
コンプライアンスに責任を負うのが1つの部門だけであってはなりません。開発、運用、セキュリティの各部門が連携し、責任を共有する必要があります。開発から展開までのあらゆる段階でセキュリティとコンプライアンスの課題に対応できるワークフローを促進することで、違反を最初から防止しやすくなります。
Zscalerのソリューション
Zscaler Data Security Posture Management (DSPM)は、完全な可視性、自動化、一貫した制御を提供し、パブリック クラウドとオンプレミス環境におけるコンプライアンスを簡素化します。
Zscaler DSPMは、一元的な情報漏洩防止(DLP)エンジン上に構築されており、機密データを特定および分類し、エクスポージャーをコンテキスト化することで、コンプライアンス違反を大規模に防止します。これにより、GDPR、HIPAA、PCI DSSなどに準拠し、すべてのチャネルにわたって機密データの一貫したセキュリティを確保します。
- コンプライアンスの可視化:コンプライアンス ステータス、構成ドリフト、ポリシー違反をリアルタイムに把握します。
- コンプライアンスのベンチマーク:データ セキュリティをコンプライアンス フレームワークやベスト プラクティスに自動マッピングし、ギャップを評価します。
- 修復:関係者向けに進捗を追跡しながら、コンプライアンス リスクに優先順位を付けて対応します。
- 分析とレポート:監査用のレポート作成を自動化し、リソースの負担を軽減しながら、正確性を担保します。
組み込みのAIセキュリティ ポスチャー管理(AI-SPM)は、AIサービス、AIエージェント、AIモデルに対する詳細な可視性を提供します。高度なLLM分類により、AIサービスにマッピングされた機密データのリスクを簡単に検出、分類、評価し、データ、AI、関連付けのリスクを完全に把握できます。
よくある質問
自動化により、設定ミスやコンプライアンス違反のリソースなどの問題を継続的に監視し、時間を節約することができます。自動化ツールは、罰金や侵害、セキュリティ違反が発生する前に、リスクを迅速に特定し、問題を修正します。また、詳細なレポートも生成できるため、コンプライアンスに関する不確かな推測を排除します。
クラウド プロバイダーは、サーバー、ストレージ、ネットワーク インフラを保護します。また、監視、暗号化、アクセス制御のためのツールも提供します。一方、データの保護、権限の管理、設定の構成は顧客の責任となります。この共有責任において、組織はコンプライアンス対応を積極的に管理することが求められます。
コンプライアンス違反は、アクセス制御の設定ミス、セキュリティ タスクの責任の不明確さ、プロバイダー間の可視性の欠如が原因で発生します。また、シャドーITや管理されていないデータの拡散も死角を生み出し、問題の原因となります。これらのギャップにより、組織は違反、侵害、監査の遅延に対して脆弱になります。