/ 脅威ハンティングとレッド チーム演習の比較:主な違いとベスト プラクティス
脅威ハンティングとレッド チーム演習の比較:主な違いとベスト プラクティス
脅威ハンティングとレッド チーム演習は、進化するサイバーセキュリティの世界で悪意のあるアクティビティーから身を守るためのプロアクティブなアプローチとして不可欠な存在です。脅威ハンティングが標準的なセキュリティ対策をすり抜けた脅威を特定することに重点を置く一方、レッド チーム演習では実際の攻撃をシミュレーションしてシステムの脆弱性を評価します。これらの手法を組み合わせることで、脆弱性へのプロアクティブな対処とレジリエンスの改善を実現し、組織の防御を強化できます。
はじめに
サイバーセキュリティは一度の対策で終わるのものではなく、常に変化する脅威と戦っていく動的な取り組みです。大きな被害を出したことで知られるSolarWinds攻撃が数か月にわたって検出されなかったように、サイバー攻撃は年々高度化しており、従来の事後対応型のセキュリティ対策ではリスクを十分に軽減できないことが浮き彫りになっています。高度な標的型攻撃(APT)などの攻撃に対抗するために、組織は脅威ハンティングやレッド チーム演習などのプロアクティブなサイバーセキュリティ手法を実装しています。これらのアプローチは、いずれも組織のサイバー レジリエンスを強化することを目標としていますが、目的とプロセスは異なります。
この記事では、脅威ハンティングとレッド チーム演習の比較、サイバーセキュリティ戦略における独自の役割、この手法を組み合わせてバランスの取れた防御態勢を構築する方法について詳しく解説します。最後に、Zscaler Zero Trust Exchange (ZTE)プラットフォームとZscaler Managed Threat Huntingの連携により、組織がこれらの手法をワークフローにシームレスに統合する方法についても解説します。
脅威ハンティングとは
脅威ハンティングは、プロアクティブなサイバーセキュリティ手法の一つで、ファイアウォールや侵入検知システムなどの従来のセキュリティ制御を回避するサイバー脅威を積極的に検出することに焦点を当てています。警報や警告のみを発する受け身のアプローチとは異なり、脅威ハンティングでは、人間の専門知識や脅威インテリジェンス、分析を活用することで、不正侵入を受けたエンドポイントや内部脅威など、悪意のあるアクティビティーを検出します。
脅威ハンティングのプロセス
脅威ハンティングを成功させるには、計画的かつ体系的なプロセスが必要です。そのプロセスには、多くの場合、以下のような手順が含まれます。
- 仮説の設定:セキュリティ アナリストが既存の脅威インテリジェンスや観察された異常に基づいて仮説を立てます。たとえば、異常なIPアドレスやユーザー行動などの侵害の痕跡(IoC)をきっかけに、より詳細な調査を行います。
- データ収集:アナリストは、エンドポイント、ネットワーク トラフィック、ログ、その他のテレメトリーからデータを収集します。無関係なデータは高度なツールによるフィルタリングで除外されるため、セキュリティ部門は疑わしいシグナルに集中できます。
- 行動分析:脅威ハンターがデータを分析し、通常のパターンからの逸脱を特定します。逸脱は、脅威アクターがネットワークにアクセスしようとしているサインの可能性があります。
- 脅威の検証:脅威の特定後は、誤検知ではないことを確認するために、さらなる調査を通じて検証を行います。
脅威ハンティングの主な特長
- 人間の直感と自動化の融合:アナリストは、専門知識と自動化ツールを組み合わせてIoCを特定し、最新の脅威を調査します。
- 脅威の早期検出:特定した脅威が本格的なインシデントに発展する前に分離することで、予防的な措置が可能になります。
- 滞留時間の短縮:特定が早いほど脅威を早期に軽減し、潜在的な被害を最小限に抑えることができます。
レッド チーム演習とは
脅威ハンティングが既存の 侵害を特定しようとするのに対し、レッド チーム演習では異なるアプローチを取り、攻撃者の立場を想定します。セキュリティの専門家が実際のサイバー攻撃のシミュレーションを行うことで、組織の防御態勢の堅牢性を検証し、リスクを評価します。そして、悪用可能な脆弱性を特定します。
レッド チーム演習の主な特長
- 敵対的戦術: レッド チーム演習では、 フィッシング、ソーシャル エンジニアリング、設定ミスの悪用など、脅威アクターの戦略や手法を再現します。
- 目標指向の手法:この演習では、特定の脆弱性や攻撃シナリオを評価し、他の手法では検出できない可能性のあるセキュリティ リスクを明らかにすることを目指します。
レッド チーム演習の手順
- 偵察:レッド チームは、エンドポイントの構成や脆弱なパスワード、設定ミスのある資産など、標的に関する背景情報を収集します。
- エクスプロイト:レッド チームは、 スピア フィッシングやパッチが適用されていないソフトウェアの脆弱性の悪用などによってアクセスを試みます。
- ラテラル ムーブメント:足場を確立したら、システム間を移動して影響の最大化を試みます。
- 攻撃目標の達成:レッド チームが機密データの抜き取りやランサムウェア インシデントのシミュレーションなど、事前に定めた目標を達成すると評価が終了します。
脅威ハンティングとレッド チーム演習
脅威ハンティングとレッド チーム演習は、いずれもサイバーセキュリティ上の脅威に対する防御を向上させることを目標としていますが、その方法と目的は大きく異なります。以下の表は、この2つのアプローチを比較したものです。
脅威ハンティングとレッド チーム演習の相乗効果
サイバーセキュリティ戦略を強化するには、個々の戦術を実装するだけでは不十分です。脅威ハンティングとレッド チーム演習を組み合わせた協調的なアプローチにより、高度な脅威に対する包括的な防御を実現できます。
連携
レッド チーム演習から得られるインサイト(悪用された弱点や回避されたセキュリティ制御など)は、脅威ハンティングにおける仮説の設定に役立ちます。たとえば、フィッシング攻撃のシミュレーションを行うレッド チームは、メール セキュリティ ポリシーによくある脆弱性を発見できます。この知識を活用することで、セキュリティ運用部門はフィッシング キャンペーンに関連する脅威の特定に集中できます。
戦略の統合
脅威ハンティングとレッド チーム演習を一続きの戦略として統合することで、組織は検出能力を強化し、致命的なリスクに対するエクスポージャーを軽減できます。統合的なレポート作成とリスク評価のプロセスにより、一方の実践で得られた結果を他方の改善に迅速に適用することが可能です。
連携のメリット
- さまざまな攻撃対象領域に対応できる多層型の防御の構築
- 脆弱性の特定の迅速化を通じたシステムのダウンタイム最小化
- 進化するサイバーセキュリティ上の脅威とIoCに対する意識の向上
脅威ハンティングとレッド チーム演習のベスト プラクティス
サイバーセキュリティ防御を有意義な形で強化するには、脅威ハンティングとレッド チーム演習の両方のベスト プラクティスを順守することが欠かせません。これらの手法の効果を最大限に引き出すには、明確な目標、定期的な評価、より広範かつプロアクティブなサイバーセキュリティ戦略への統合が必要です。効果を最大化するためのベスト プラクティスの一部を以下に紹介します。
- 明確な目標の定義:隠れた脅威の検出や脆弱性の発見など、具体的な目標から始めて集中的な取り組みを行うことで、実用的なインサイトを確実に導き出します。
- 自動化と専門知識の統合:高度なツールで大量のデータを処理しながら、人間の直感と経験を活かして分析と検証を行います。
- 頻繁な連携:脅威アクターを模倣するレッド チームと、検知と対応を担当するブルー チーム間の連携を促進します。レッド チーム演習から得られるインサイトは、脅威ハンティング戦略に活用できます。
- 継続的な改善:プロセスを定期的に評価および改善し、進化する脅威の状況と最新の脅威に常に対応します。
以上のベスト プラクティスを次のレベルに引き上げるには、脅威の検出と修復を加速させるための高度な可視性、スケーラビリティー、継続的な監視を実現するプラットフォームが必要です。 Zscaler Zero Trust Exchangeは、このような戦略を効果的に実装するための基盤として機能し、脅威ハンティングにおけるアジリティーの向上、レッド チーム演習から得られた教訓のシームレスな統合を可能にします。
Zscaler Managed Threat Hunting
Zscaler Managed Threat Huntingは、最先端の技術と人間の専門知識を組み合わせることで、隠れた脅威を検出し、滞留時間を短縮しながら、組織の全体的なセキュリティ態勢を強化します。Zscalerは、高度な脅威インテリジェンス、行動分析、リアルタイムのインサイトを活用し、最も複雑なシナリオにおいてもセキュリティ部門が脅威アクターに対抗できるよう支援します。ハンティングの結果を、レッド チーム演習から得られたインサイトなどの広範なセキュリティ戦略と統合することで、プロアクティブで適応性に優れた堅牢な防御を構築できます。
Zscaler Managed Threat Huntingの主なメリット
- 脅威のプロアクティブな検出:従来のツールでは見落とされがちなIoCや悪意のあるアクティビティーを特定し、早期の介入を可能にします。
- 実用的な脅威インテリジェンス:コンテキストに基づく高度なインサイトを提供し、クラウド環境とオンプレミス環境をまたいで脆弱性に優先順位を付けて効果的に対処します。
- リアルタイムの可視性: ユーザー アクティビティー、エンドポイント、ネットワーク トラフィックを一元的に監視し、検出しにくい新たなサイバーセキュリティ上の脅威を捕捉します。
- 対応能力の強化:脅威ハンティングと修復作業を迅速化し、高度な標的型攻撃(APT)を受けるリスクを軽減します。
アイデンティティーに基づくプロアクティブな手法によって、組織のセキュリティを変革することができます。
その他のコンテンツ
脅威ハンティングでは、自動化されたツールを回避する隠れた脅威をプロアクティブに特定し、滞留時間を短縮しながら、対応を改善します。侵害の可能性を示唆する異常なアクティビティーや指標に焦点を当てることで、他のセキュリティ対策を補完します。
いいえ、レッド チーム演習はあらゆる規模の組織で有効です。小規模な組織では、レッド チーム演習によって費用対効果の高い方法で脆弱性を特定できます。多くの場合、サードパーティーの専門家の力を借りて、サイバー攻撃のシミュレーションを行い、セキュリティ防御を強化します。
レッド チーム演習は、少なくとも年1回またはインフラの大幅な変更後に定期的に実施する必要があります。小まめに検証することで、進化する脅威に対するシステムのレジリエンスが維持され、新たに出現した脆弱性にも対処できます。


