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リバース プロキシとは?SaaS利用における限界と最適なアプローチ
Webサービスを安全・快適に提供・利用するうえで、外部脅威を防ぎつつ効率を高めるリバースプロキシは欠かせません。IPアドレスの隠蔽や複数サーバーへの振り分けなど、役割は多岐にわたります。
しかし近年、クラウド/SaaSの普及に伴い、リバースプロキシをSaaSのアクセス制御に流用するアプローチが生まれましたが、設計上の制約に起因する深刻な課題が明らかになっています。
本記事では、リバースプロキシの基本、SaaS利用で顕在化する課題、そしてその限界を超える次世代のセキュリティアプローチまでを、順を追って解説します。
リバース プロキシとは

リバース プロキシは、Webサーバーの前面に配置され、クライアント(ユーザーのブラウザーなど)からのリクエストを代理で受け取るサーバーのことです。
クライアントはWebサーバーに直接アクセスしているつもりでも、実際にはリバースプロキシと通信しています。リバースプロキシは受け取ったリクエストを、背後にある適切なWebサーバーに転送し、サーバーからの応答(レスポンス)をクライアントに返します。
リバース プロキシの仕組み
リバース プロキシの基本的なプロセスは以下のとおりです。
- クライアントがリクエストを送信し、リバースプロキシが受け取る
- リバースプロキシが必要に応じて認証・認可やWAFでリクエストを検査する
- 問題がなければ、内部の適切なアプリケーションサーバーへ転送する(URLルーティング、負荷分散、キャッシュもここで機能)
- サーバーがレスポンスを生成し、リバースプロキシへ返す
- リバースプロキシがレスポンスを処理してクライアントへ返す(キャッシュ、圧縮、ヘッダー書き換え、TLS終端/再暗号化など)
フォワード プロキシとの違い
リバース プロキシとフォワード プロキシは混同されがちですが、以下のような違いがあります。
項目 | リバース プロキシ | フォワード プロキシ |
|---|---|---|
配置場所 | インターネットとWebサーバーの間 | クライアントPCとインターネットの間 |
目的 | 社内Webサーバーを守り、安定稼働させる(従来型) 非管理端末からSaaSへの安全なアクセス制御(現代型) | 従業員の外部向けWeb通信を管理・保護する |
主な役割 | 負荷分散、キャッシュ、SSL終端、WAF、サーバー隠蔽など | アクセス制御、ログ管理、匿名化、キャッシュなど |
通信の方向 | 外部クライアント → 内部サーバーへの通信を代理 | 内部ユーザー → 外部サービスへの通信を代理 |
リバース プロキシの2つの主要なユースケース

リバースプロキシは、その「代理応答」という基本的な仕組みを応用し、時代と共に使われ方が進化してきました。ここでは、「誰に」「何を」提供するのかという視点で、代表的な2つのユースケースを解説します。
- Webサーバーの保護と負荷分散(従来型)
- 非管理端末からSaaSへの安全なアクセス制御(現代型)
ユースケース1:不特定多数に向けたWebサーバーの公開(従来型)
これは、不特定多数のユーザーが利用するWebサイト(企業のホームページやECサイトなど)をインターネットに安全に公開するための、リバースプロキシの基本的な使い方です。Webサーバーの手前にリバースプロキシを置くことで、サーバーのIPアドレスを隠蔽し、攻撃から守ります。また、アクセスが集中した際に複数のサーバーへ処理を振り分ける(負荷分散する)ことで、システムの安定稼働を実現します。
この用途では、オープンソースソフトウェアである Nginx (エンジンエックス) や Apache HTTP Server (アパッチ) などが代表的な例として知られています。
また、この仕組みをさらに発展させ、世界中の多数のサーバーに分散させたものがCDN(コンテンツデリバリーネットワーク)です。Akamai や Amazon CloudFront などのCDNは、ユーザーに最も近いサーバーから高速にコンテンツを配信することで、不特定多数向けのWebサイトのユーザー体験を向上させるという点でも、広義のリバースプロキシの一種と言えます。
ユースケース2:特定ユーザーのためのSaaS/非公開アプリへのアクセス制御(現代型)
ユースケース1が不特定多数向けの「公開」を目的としていたのに対し、こちらは自社の従業員や取引先といった特定のユーザーを対象に、本来公開されていない社内システムや、契約者のみが利用するSaaSの自社テナントへ安全に接続させるための現代的な応用例です。
具体的には、従業員がBYOD(私物端末)や自宅のPCといった会社の管理下にないデバイスから、Microsoft 365やSalesforceなどのSaaSを利用する際に、その通信をクラウド上のリバースプロキシに経由させます。
これにより、企業は従業員の端末にエージェント(専用ソフト)を導入することなく、誰が・どのSaaSに・どのようにアクセスしているかを可視化・制御しようとします。この方式は、主にCASB (キャスビー) ベンダーなどが提供するクラウドサービスの一部として実現されています。本記事では、まさにこの現代的なユースケースに潜む課題と、その解決策を深掘りしていきます。
SaaS向けリバースプロキシのメリットと「限界」

リバースプロキシ技術をSaaSへのアクセス制御に応用する方法は、BYODや管理外端末の利用が増える中で、一見すると魅力的なアプローチに見えます。しかし、その仕組みによる「制約」も少しずつ明らかになってきました。
ここでは、まずそのメリットを整理し、次に多くの企業が直面している4つの主な課題について解説します。
メリット:エージェントレスでのアクセス制御
この方式の最大の特徴は、「エージェントレス」で動作できる点にあります。
従業員の私物端末(BYOD)や自宅PCなど、IT部門が管理できないデバイスに専用ソフトウェア(エージェント)をインストールさせるのは、プライバシーや運用負荷、コストの観点から現実的ではありません。
リバースプロキシ方式であれば、SSO(シングルサインオン)と連携させることで、ユーザーがSaaSへアクセスする際の通信を自動的にプロキシ経由に切り替えることができます。これにより、管理者は端末環境に依存せず、すべてのアクセスを一元的に認証・制御し、「誰が」「どのSaaSに」アクセスしたかというログを取得できます。
この仕組みにより、管理外デバイスからのアクセス可視化や、シャドーIT対策の強化に一定の効果が期待できます。
デメリット:浮き彫りになる4つの限界
このエージェントレスというメリットの裏で、実際に運用をはじめると、アーキテクチャに起因する深刻な課題が浮き彫りになります。
課題:対応アプリが限定的(ブラインドスポット問題)
この方式は、ベンダー側で対応が保証された特定のアプリケーション(URLリスト)でのみ正常に機能します。現状、多くのソリューションでは対応アプリ数が限られており、中には利用頻度の低いサービスが含まれる場合もあります。
そのため、自社で利用している最新のSaaSがこのリストに含まれていない場合、そのアクセスは保護の対象外となります。結果として、監視・制御の届かない「ブラインドスポット(死角)」が生じ、野放しのシャドーITとして情報漏えいリスクに晒され続ける可能性があります。
課題:導入・運用が複雑でリスクが高い
導入にあたっては、企業の認証基盤であるIdP(アイデンティティプロバイダー)の設定を変更し、特定のSaaSへのアクセスをリバースプロキシ経由に強制的に切り替える必要があります。この設定には高度な専門知識が求められ、誤設定が発生した場合、全社的な認証システムに影響を及ぼす可能性があります。
さらに、SaaS側の仕様変更やUIアップデートにより、画面表示の崩れや機能の一部が動作しなくなるなどの互換性問題が発生することもあります。そのたびに原因の特定や設定の再調整が必要となり、情報システム部門にとって継続的な運用負荷の増大につながります。
課題:ユーザー体験を損ない、生産性が低下する
リバースプロキシ方式では、通信内容を中継・解析する過程でアプリケーションの動作に影響が出る場合があります。
その結果、「ファイルのアップロードが理由なく失敗する」「ZIPファイル内に1つでもポリシー違反のファイルがあると、問題のないファイルも含めてZIP全体がダウンロードできない」といった事象が発生することがあります。このように、本来「動いて当たり前」とされる基本機能が制限されることで、ユーザーの操作体験が損なわれ、生産性の低下やIT部門への問い合わせ増加につながるケースが少なくありません。
課題:情報漏洩対策として不十分(コピペ等に無力)
リバースプロキシは、あくまでサーバーとの通信(トラフィック)を制御する技術です。そのため、ブラウザー上に表示された機密情報をコピー/スクリーンショット/印刷などの形で持ち出す行為には対応できません。
一部のアプリでは、レスポンス内容を検知して特定ファイルのダウンロードを制御することも可能ですが、それすらもSaaSの仕様変更やアプリごとの実装差によって安定した制御は難しいのが実情です。
結果として、データをユーザーの画面に描画した時点で保護の範囲を超えてしまい、DLP(情報漏洩防止)対策としては不十分です。
まとめ
本記事では、リバースプロキシの基本的な仕組みから、SaaSアクセス制御への応用、そしてその構造的な課題までを解説してきました。
リバースプロキシは、Webサーバーを保護し安定稼働させるうえで非常に有効な技術です。しかし、そのアーキテクチャをSaaSのアクセス制御に転用すると、対応範囲の狭さ、導入・運用の複雑さ、互換性トラブルによるユーザー体験の低下といった限界に直面します。
さらに、コピー&ペーストやスクリーンショットによる情報持ち出しを防げないという根本的な問題も残ります。
これらは一時的な不具合ではなく、リバースプロキシという仕組みに内在する構造的な制約です。その結果、「エージェントレス」という利点が十分に活かせなくなるケースも少なくありません。
真のゼロトラストセキュリティを実現するには、過去の常識にとらわれず、ブラウザー分離など、通信経路だけでなく操作レベルまで制御できる新しいアプローチへの転換が求められます。
Zscalerが提供するクラウドベースのブラウザー分離
SaaS向けリバースプロキシには、対応アプリの少なさ、複雑な運用、ユーザー体験の低下、そして不十分な情報漏洩対策といった課題があります。これらを根本から解決するために設計されたのが、Zscaler Zero Trust Browser™です。
この製品の中核となるのが、「ブラウザー分離」という技術です。もともとブラウザー分離は、フィッシングサイトやマルウェアなど、外部Webサイトがもたらす脅威からユーザー端末を守るために生まれました。Webコンテンツを端末上で直接実行せず、クラウド上の安全なコンテナで実行し、その無害化された画面だけをピクセルデータとしてストリーミングすることで、実行型の脅威を根本から遮断します。
そして、この「脅威を端末から完全に切り離す」という特性は、外部攻撃の防御だけでなく、SaaSや社内Webアプリへのアクセス制御においても、リバースプロキシの限界を克服する有効な手段となります。
リバースプロキシ方式がメリットとしていた「エージェントレス」なBYODアクセスという利便性はそのままに、全く異なるアプローチでSaaS利用のあらゆる課題を解決します。
あらゆるWebサイトやアプリケーションを保護
リバースプロキシのように対応URLリストに依存せず、未知・新規のSaaSやWebサービスもすべて分離環境で実行して保護します。これにより、セキュリティ担当者が懸念する「ブラインドスポット(死角)」を生みません。
ネイティブなユーザー体験を維持
独自の高速ストリーミング技術により、表示崩れや機能不具合に悩まされることなく、ローカルブラウザーと同等の自然な操作感を実現します。セキュリティ強化のために生産性を犠牲にする必要はありません。
高度なデータ漏洩対策を実現
リバースプロキシでは困難だったきめ細かなDLPを標準提供。表示された機密情報のコピー&ペーストや印刷の制御、画面への透かし付与により、スクリーンショット経由の情報流出リスクも低減します。さらに、ファイルのアップロード/ダウンロードについても、リバースプロキシでは互換性や例外処理が多く制御が不安定になりがちですが、ブラウザー分離ではクラウド側で確実にポリシー適用が可能です。アップロード時の検査・ブロック、ダウンロードの無害化(マルウェア検査やコンテンツ変換)、種別やサイズ、送信先に応じた細かな制御を一貫して実施できます。
シンプルで迅速な導入と管理
複雑なIdP設定の改修やSaaSごとの互換性検証は不要です。Zscalerの統合クラウドプラットフォーム上でポリシーを定義するだけで、場所・デバイスを問わず一貫したゼロトラストセキュリティを即時に適用できます。
Zscalerが提供するクラウドベースのブラウザー分離の詳細にご興味のある方は、Zscalerにお問い合わせ、またはデモを依頼するまでご連絡ください。
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