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ゼロトラスト アーキテクチャーとは?基礎から導入メリット、実現方法までわかりやすく解説
企業のIT環境は、クラウドの普及や働き方の多様化により、従来の境界型セキュリティでは守りきれない時代に突入しています。こうした状況の中で注目を集めているのがゼロトラスト アーキテクチャーです。ゼロトラストの概念に基づき、すべてのアクセスを認証、検証、監視するこのモデルは、NISTや日本のデジタル庁も導入を推奨する世界標準のセキュリティとして官公庁や企業などで広く導入が進んでいます。
本記事では、ゼロトラスト アーキテクチャーの基礎から導入方法までをわかりやすく解説し、組織のセキュリティ強化に役立つ視点を提供します。
ゼロトラスト アーキテクチャーとは

ゼロトラスト アーキテクチャーとは、「暗黙の信頼を排除し、すべてを検証する」という原則を基盤とした新たなセキュリティ モデルです。従来のセキュリティは社内ネットワークを安全とみなす境界防御型が基本で、一度認証されれば内部リソースに自由にアクセスできるという課題がありました。しかしクラウド活用やリモートワークの普及により、ネットワークの内と外という境界の概念は意味を失いつつあります。
ゼロトラスト アーキテクチャーでは、ネットワークの内外を問わず、すべてのユーザー、デバイス、アプリケーション、通信を常に認証、検証、監視します。アクセスはユーザーの属性やデバイスの状態、位置情報などを動的に評価したうえで、最小権限の原則に基づいて制御されます。従来のVPNがネットワーク全体への入口を提供するのに対し、ゼロトラスト アーキテクチャーでは認証基盤(IdP)とポリシー エンジンが連携して、アプリやリソース単位でのきめ細かなアクセス制御を実現します。
NISTによるゼロトラスト アーキテクチャーの定義
NIST (米国国立標準技術研究所)は、ゼロトラスト アーキテクチャーを「ゼロトラストの原則に基づいて、データ侵害を防止し、内部でのラテラル ムーブメントを制限するために設計された組織向けのセキュリティ アーキテクチャー」と定義しています1。
デジタル庁によるゼロトラスト アーキテクチャーの定義
デジタル庁では、ゼロトラスト アーキテクチャーを「クラウド活用や働き方の多様化で増大する脅威に適合するために、政府情報システムの内部における攻撃者の自由な行動を阻害しようとするセキュリティ対策の考え方」と定義しています2。
1 https://nvlpubs.nist.gov/nistpubs/SpecialPublications/NIST.SP.800-207.pdf
ゼロトラスト アーキテクチャーが注目される背景

ゼロトラスト アーキテクチャーが注目されている背景は以下のとおりです。
- クラウド利用の拡大
- リモート ワークの増加
それぞれについて、順に解説します。
リモート ワークの増加
パンデミックをきっかけに多くの企業がリモートワークを本格的に導入しました。従業員が自宅や外出先から業務システムにアクセスすることが日常化し、「社内ネットワーク=安全」という従来の前提は崩れています。従来のVPNによる一時的な対応では、接続増加による帯域の逼迫や端末管理の複雑化、さらには侵入後に社内全体へ広がるリスクなどが顕在化し、利便性とセキュリティの両立は困難になっています。
クラウド利用の拡大
SaaS (Software as a Service)やIaaS (Infrastructure as a Service)の活用が一般化し、企業の重要な業務やデータがオンプレミス環境からクラウドへと移行しています。その結果、ネットワークの境界が曖昧になり、従来のファイア ウォールや単純なアクセス制御では、クラウド特有のリスク(設定不備やシャドーIT、データ流通の不透明化)に十分対応できないケースが増えています。
ゼロトラスト アーキテクチャーは、クラウドやオンプレミスといった場所を問わず、ユーザーやデバイス、アプリケーション単位で動的にアクセスを制御できるため、クラウド時代に適したセキュリティ モデルとして注目されています。
ゼロトラスト アーキテクチャー導入のメリット
ゼロトラスト アーキテクチャーを導入することで得られるメリットは以下のとおりです。
- 場所やデバイスを問わない安全なネットワークの構築
- より高度なセキュリティの実現
場所やデバイスを問わない安全なネットワークの構築

ゼロトラスト アーキテクチャーでは、アクセス元の場所や使用しているデバイスの種類にかかわらず、同一のセキュリティ ポリシーを適用できます。社内外の多様な条件に対応し、ユーザーやデバイスごとにリスクを評価して、アクセスを柔軟に制御できます。
これにより、リモート ワークやハイブリッド ワークなど、従業員がどこからでも安全に業務を行える環境を整え、業務効率とセキュリティの両立を図れます。
より高度なセキュリティの実現
ゼロトラスト アーキテクチャーの特長は、「誰が」「何に」「どこから」「どのように」アクセスしているのかを常に監視、検証できる点にあります。アクセス毎の認証や許可を必須とし、状況に応じてアクセス権限を動的に変化させることで、不正アクセスや内部不正のリスクを大幅に低減できます。
さらに、アクセス ログやユーザーの挙動を継続的に可視化、分析することで、従来では検出できなかった潜在的な脅威にも対応できます。
ゼロトラスト アーキテクチャーを実現する7つの柱

ゼロトラスト アーキテクチャーを実現するには、以下のような要素が重要です。
7つの柱 | 役割 |
|---|---|
デバイス セキュリティ | 端末の健全性確認や管理、EDRによる継続的な監視 |
ネットワーク セキュリティ | 通信の暗号化、トラフィックの監視、マイクロ セグメンテーションによる動的制御 |
アイデンティティー セキュリティ | MFAやIdPを用いた強固な認証、属性やコンテキストに基づくアクセス制御 |
ワークロード セキュリティ | クラウドやコンテナを含むアプリやサービス単位での保護 |
データ セキュリティ | データの分類、暗号化、DLPなどによる漏洩防止 |
可視化と分析 | ログ収集、脅威インテリジェンス、行動分析によるセキュリティ状態の可視化 |
自動化 | ポリシー適用やインシデント対応の自動化、SOAR連携による迅速な対処 |
これらの詳細については、こちらの記事でも紹介していますので、あわせてお読みください。
ゼロトラスト アーキテクチャーを実現するソリューションの例
ゼロトラスト アーキテクチャーを実現する代表的なソリューションは以下のとおりです。
ソリューション | 主な機能 | 主な役割 |
|---|---|---|
MFA (多要素認証) | パスワード、OTP、生体認証など複数要素による本人確認 | アイデンティティー セキュリティ |
EDR (エンドポイントでの検知と対応) | 端末上の脅威検知、分析、封じ込め、復旧 | デバイス セキュリティ、自動化 |
SDP (ソフトウェア定義の境界) | 未認証ユーザーに対するアプリ不可視化、動的アクセス制御 | ネットワーク セキュリティ、ワークロード セキュリティ |
CASB (クラウド アクセス セキュリティ ブローカー) | クラウド利用状況の可視化、制御、DLP、シャドーIT対策 | ワークロード セキュリティ、データ セキュリティ |
DEM (デジタル エクスペリエンス モニタリング) | ユーザー体感品質の可視化、アプリ/ネットワークの問題特定 | 可視化と分析 |
CTEM (継続的な脅威エクスポージャー管理) | 攻撃対象領域の継続評価、リスク優先度付けと軽減 | データセキュリティ、可視化と分析、自動化 |
デセプション | 偽装資産(デコイ)による攻撃者の誘導、早期検知 | ネットワーク セキュリティ、可視化と分析、自動化 |
ATP (高度な脅威対策) | ネットワークトラフィック分析、未知マルウェア防御、脅威インテリジェンス | ワークロード セキュリティ、データ セキュリティ |
それぞれについて解説します。
MFA (多要素認証)
MFAとは、パスワードに加えてワンタイム パスワード(OTP)、認証アプリ、物理トークン、生体認証など複数の認証要素を組み合わせて本人確認を行う仕組みです。パスワード漏洩やなりすましに対する有効な防御策であり、ゼロトラスト アーキテクチャーを導入する多くの企業で必須の基盤となっています。
EDR (エンドポイントでの検知と対応)
EDRは、エンドポイント(端末)上の不審な挙動や脅威をリアルタイムに検知および分析し、対応を行うソリューションです。ログの収集と可視化、自動隔離、アラート通知などを通じて、マルウェア感染や内部不正を早期に発見し、封じ込めから復旧までを支援します。アンチウイルス製品では防ぎきれない高度な攻撃に対して、SOCやSIEMと連携して迅速なインシデント対応を可能にします。
SDP (ソフトウェア定義の境界)
SDPは、ユーザーやデバイスとアプリケーション間に動的かつ限定的な仮想境界を構築し、未認証のユーザーからはネットワーク上のアプリやサービスを不可視化する技術です。これにより攻撃対象領域を縮小し、標的型攻撃やラテラル ムーブメントのリスクを最小化します。SDPはゼロトラスト アーキテクチャーにおけるZTNA (ゼロトラスト ネットワーク アクセス)の代表的な実装方式として、多くの企業で採用されています。
CASB (クラウド アクセス セキュリティ ブローカー)
CASBは、クラウド アプリケーションへのアクセスを可視化、制御し、クラウド利用のセキュリティ ギャップを解消するソリューションです。シャドーIT (許可されないクラウドサービス)の検出、クラウド上のデータ保護(暗号化/DLP)、コンプライアンス違反の防止、不審行動の検知などを実現し、クラウド環境における重要なセキュリティ対策基盤となります。
DEM (デジタル エクスペリエンス モニタリング)
DEMとは、ユーザーが業務で利用するアプリケーションやネットワーク、デバイスの体感品質をエンドツーエンドで可視化し、維持、改善を支援するモニタリング手法です。従来のインフラ監視やネットワーク監視では把握できなかったユーザー エクスペリエンス上の問題を早期に特定し、IT部門による迅速なトラブル シューティングやサービス品質向上を可能にします。
CTEM (継続的な脅威エクスポージャー管理)
CTEMは、Gartnerが提唱した新しいセキュリティ戦略で、組織の攻撃対象領域を継続的に評価し、脆弱性や設定不備といったリスクを現実的な脅威シナリオに基づいて優先順位付けし、プロアクティブに軽減する反復的なプログラムです。CTEMは「特定、発見、優先付け、検証、改善」のサイクルを継続的に回すことで、従来の脆弱性管理を超え、ゼロトラスト制御の有効性検証やラテラル ムーブメント阻止など、実効性ある防御態勢の強化を可能にします。
デセプション
デセプションとは、攻撃者を意図的に欺き、その活動を早期に特定することでリスクを最小化する能動的なサイバー防御手法です。ネットワーク上に本物そっくりの偽装資産(デコイ)や偽クレデンシャルを配置し、攻撃者が接触した時点で高精度のアラートを発することで、従来の検出では難しいラテラル ムーブメント、ゼロデイ、ファイルレス攻撃の検知を可能にします。誤検出率が極めて低く、運用負荷軽減や攻撃者の行動把握にも有効です。
ATP (高度な脅威対策)
ATPは、マルウェアやフィッシング、ゼロデイ攻撃といった巧妙かつ進化するサイバー脅威から、機密データを保護するために設計されたソリューションです。
メールやエンドポイント、クラウドなど多層のセキュリティ領域を統合し、ネットワーク トラフィック分析や脅威インテリジェンスの共有、サンドボックスによる不審ファイルの隔離と分析などを通じて、従来型の単機能な防御を強化します。
脅威の検出から対応までのスピードと精度を高め、広範な攻撃ベクトルにも迅速に対応できるのが特徴です。
ゼロトラスト アーキテクチャーの導入手順

ゼロトラスト アーキテクチャーの導入は段階的に行うのが現実的です。
【ゼロトラスト アーキテクチャーの導入手順】
- 保護対象の把握
- トランザクション フローの可視化
- ゼロトラスト アーキテクチャーの設計
- 運用ポリシーの作成
- 運用開始後の監視および管理の徹底
保護対象の把握
まず、自社の情報資産の中で最も重要度が高い領域(Crown Jewels)を特定します。ビジネスへの影響度、規制およびコンプライアンス要件、業務依存度などの観点から評価し、段階的にゼロトラストを適用する優先度を明確化します。
トランザクション フローの可視化
次に、重要資産に対して「誰が」「どのデバイスから」「どの経路を通って」「どのようなアプリを利用して」アクセスしているかを可視化します。通信フローや依存関係を把握することで、適切な制御ポイントや監視箇所を特定できます。これにより、従来の境界防御では見落とされていたアクセス リスクを洗い出せます。
ゼロトラスト アーキテクチャーの設計
可視化したアクセス情報を基に、認証方式(MFA、アダプティブ認証)、アクセス制御(ポリシーベース/ZTNA)、監視機能(EDR、SIEM連携)を統合したゼロトラスト アーキテクチャーを設計します。この段階では、ネットワーク セグメントの再構築やID管理基盤(IdP、SSO、IGA)の強化も検討対象となり、必要に応じてシステム全体の再設計が求められます。
運用ポリシーの作成
設計したモデルを実運用に落とし込むためには、明確なポリシーと標準運用手順(SOP)の整備が不可欠です。アクセス権限の付与/剥奪のルール、例外対応の手順、インシデント発生時の対応フローを文書化して全関係者に周知し、教育を行います。ポリシーは一度策定して終わりではなく、定期的に見直すことが前提となります。
運用開始後の監視および管理の徹底
ゼロトラストは「導入して終わり」ではなく、継続的な監視と改善が必須です。ログ分析や脅威インテリジェンスの活用、アラート設定の調整、ポリシーのチューニングを通じて、新たな攻撃手法やビジネス環境の変化に適応します。また、CTEMやデセプションなどのソリューションを組み合わせ、実効性を検証しながら動的に防御体制を強化することが求められます。
まとめ
ゼロトラスト アーキテクチャーは、「暗黙の信頼を排除し、すべてを検証する」という原則にもとづき、国内外で急速に普及している新しいセキュリティ モデルです。導入のメリットや手順、関連するソリューションなどを体系的に理解することは、組織のセキュリティ態勢を次のレベルに引き上げるためにも不可欠です。
導入にあたっては一度にすべてを変えるのではなく、優先度の高い領域から段階的に進めることが現実的です。ゼロトラストは単なるテクノロジー導入ではなく、組織全体のセキュリティ文化を変革する取り組みです。継続的な改善を通じて、変化する脅威環境に適応できる強靭な防御体制を築くことができるでしょう。
Zscaler Zero Trust Exchangeによるゼロトラストの実現
Zscaler Zero Trust Exchangeは、ゼロトラスト モデルの導入を支援するクラウド ネイティブなプラットフォームであり、その特性により、従来型セキュリティから効果的に移行するためのスムーズな実現を可能にします。このプラットフォームは、ゼロトラストの「オーバーレイ モデル」として設計されており、既存インフラをそのまま活用しながら構築できるため、大規模なIT環境の刷新を必要とせず、段階的な導入をサポートします。
さらに、Zscaler Zero Trust Exchangeは「ジャーニー型のアプローチ」を採用しているため、ゼロトラストの導入をリスクの高い領域や優先的に保護が求められるシステムから開始し、段階的に適用範囲を拡大することが可能です。このアプローチにより、企業は計画的かつ効率的にセキュリティを向上させながら、導入の複雑さを最小限に抑えることができます。
また、このプラットフォームは、従来のポイント製品群(VPN、ファイアウォール、セキュリティ アプライアンスなど)に依存する必要がなく、統合されたクラウド基盤のもとで完全にセキュリティ機能を提供します。これにより、セキュリティ管理の効率化だけでなく、ITコストの削減も実現できるほか、VPNの接続時に必要だった煩雑なプロセスを排除し、ユーザーにシームレスなアクセス体験を提供します。
【Zero Trust Exchangeの特長】
- 攻撃対象領域の最小化
- アプリケーションをZero Trust Exchangeの背後に置くことで、外部から不可視化します。
- 侵害の阻止
- TLS/SSLで暗号化された通信を含め、すべてのトラフィックをリアルタイムで検査します。高精度な脅威検出とポリシー適用により、リスクのある通信を即座に遮断します。
- ラテラル ムーブメントの防止
- ユーザーやシステムをネットワークから分離し、ネットワーク内部での不正な移動を防止します。
- 情報漏洩の防止
- SaaSやクラウド、端末上など、あらゆる場所のデータを保護します。AIによる自動分類で運用負荷を軽減しながら、機密情報を守ります。
- ユーザー エクスペリエンスの向上
- ユーザーは必要なアプリケーションにシームレスにアクセスできます。VPNで接続するときのような煩雑なプロセスは必要ありません。セキュリティを強化しながら、利便性も確保できます。
- IT運用の簡素化とコスト削減
- 複数のセキュリティ機能を1つのクラウド基盤に統合し、運用の複雑さを軽減します。保守、管理の手間を省き、全体的なITコストを最適化できます。
Zscaler Zero Trust Exchangeは、既存のインフラを活用しながら、段階的かつ効率的にゼロトラストを実装することを可能にします。その統合されたクラウド基盤により、従来型セキュリティの制約から解放され、現代のIT環境に求められる柔軟性と強固なセキュリティを両立する理想的なプラットフォームです。
セキュリティの強化と運用の効率化を目指す企業にとって、今後のIT基盤を支える重要な存在となるでしょう。
Zscalerのゼロトラスト アーキテクチャーに詳細にご興味のある方は、Zscalerにお問い合わせ、またはデモを依頼するまでご連絡ください。
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