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モバイル脅威防御(MTD)とは

モバイル脅威防御(MTD)は、悪意のあるアプリやフィッシングの試み、不正なネットワークなどのさまざまな脅威からモバイル デバイスを保護するためのサイバーセキュリティ フレームワークです。デバイスの振る舞いやネットワーク接続を継続的に分析することでモバイルを保護します。

現代のサイバーセキュリティ環境におけるMTDの重要性

スマートフォンは瞬く間に人々の生活に浸透し、その中には銀行情報から個人情報まであらゆるものが保存されています。しかし、このような利便性には代償が伴います。モバイル デバイスを狙った脅威は巧妙化し、その影響範囲は拡大し続けています。このような状況において、定期的に更新されるオペレーティング システムとリアルタイムで適応可能なセキュリティ対策のギャップを埋めるのが、モバイル脅威防御を担うサイバーセキュリティ ソリューションです。アプリ、ユーザー、クラウドの間では大量のデータが移動するため、データ侵害を防ぐには、効果的なモバイル セキュリティ戦略が欠かせません。

さらに最近では、攻撃者が機密データにアクセスするための主な手法として、スミッシング(テキスト メッセージや通話を悪用する巧妙なフィッシングの一種)が目立っています。こうした脅威により、手に負えない状況が発生する前に攻撃を阻止するためのソリューションを実装する必要性が高まっています。エンドポイントをプロアクティブに保護し、不正侵入を防ぐことで、個人データの窃取、評判の低下、規制違反リスクへの対策を強化できます。従来のエンドポイント セキュリティ対策も依然として価値はありますが、MTDは、既存のサイバー脅威と新たなサイバー脅威の両方からモバイル デバイスを保護するための繊細でより専門的なアプローチを提供します。

MTDの仕組み:重要なテクノロジーとメカニズム

MTDは、アプリケーションの振る舞いやネットワーク トラフィックなどのモバイル環境全体を分析し、悪意のあるアクティビティーを示す可能性のある異常を特定します。さまざまな特長と機能が連携することで、統合された保護レイヤーが構築されます。

  • アプリの振る舞い分析:アプリ ストアからダウンロードされたものかサイドロードされたソースかを問わず、インストールされているアプリを監視して不審なパターンを検出することで、悪意のあるアプリをブロックし、被害を未然に防ぎます。
  • ネットワーク セキュリティ:接続(パブリックWi-Fiなど)を常に評価することでセキュリティ境界を確保し、不正アクセスの試みをリアルタイムで防止します。
  • デバイスの完全性の確認:デバイスの構成、OSのバージョン、セキュリティ パッチが組織の基準を満たしているかどうかを確認し、脆弱性が生まれるリスクを低減します。
  • 脅威インテリジェンス フィード:継続的な更新と情報に基づいた分析によって、最新のエクスプロイトを常に把握し、プロアクティブかつ適応性に優れた防御を実現します。

モバイル セキュリティ上の一般的な脅威

モバイル テクノロジーによって、私たちの働き方やコミュニケーションのあり方は大きく変わりました。しかし、そこには多くの脅威が潜んでいます。組織は常に警戒を怠らず、不注意による個人データの漏洩を防ぐとともに、強力なモバイル セキュリティ プロトコルを維持する必要があります。

  • スミッシング攻撃:SMSを使用したテキストベースのフィッシング攻撃です。偽のWebサイトやテキスト メッセージを通じてユーザーをだまし、個人情報を開示するよう誘導します。
  • 不正アプリケーション:正規のものを装ったアプリにマルウェアを埋め込んだものです。ペイロードを隠して機密データにアクセスし、スパイ活動や脅迫を行います。
  • 悪意のあるネットワーク:無防備なユーザーが侵害されたホットスポットを通じて接続すると、資格情報が公開されるリスクが生まれます。攻撃者は、この資格情報を利用して組織のネットワークに侵入できる可能性があります。
  • 悪用可能な脆弱性:ハードウェアレベルの保護が備わっていないAndroidデバイスやiOSシステムでは、攻撃者がソフトウェアのセキュリティ ホールやゼロデイ脆弱性を悪用できる可能性があります。

MTDを実装する主なメリット

堅牢なモバイル脅威防御は、組織に安心感を与えるだけではありません。運用効率の向上やセキュリティ態勢の強化にもつながり、個人情報を狙った既知の攻撃や新たな攻撃のいずれをもプロアクティブに阻止できるようになります。

  • リアルタイムの脅威検出:フィッシング攻撃や悪意のあるアプリ、侵害されたネットワークをスピーディーに認識することで、迅速に対応して影響を軽減します。
  • データ保護コンプライアンス:プロアクティブな監視により、不正なデータ転送を抑制し、機密データに関連する規制違反のリスクを軽減します。
  • ITの負担軽減:自動化されたインテリジェンス機能により、セキュリティ部門は不正な動作を絶えず手動で調べることなく、より差し迫ったタスクに集中できるようになります。
  • 進化する脅威への対応能力:インテリジェンスの包括的な更新により、新たなサイバー脅威や急速に変化するサイバー脅威を継続的に防ぐことができます。

MTDとモバイル デバイス管理(MDM)の違い

MTDとMDMはどちらも包括的なモバイル セキュリティ戦略の重要な要素ですが、組織全体の保護においては異なる側面を目的としています。MDMがデバイスの制御とさまざまな使用ポリシーの施行に重点を置いているのに対し、MTDは脅威の検出と阻止に重点を置いています。

比較

MTD

主な目的

モバイルの脅威の検出と軽減


対象範囲

デバイス、ネットワーク、アプリを悪意のあるアクティビティーから保護


データ監視

個人データに関連する侵害の痕跡の監視


脅威検出

リアルタイム分析と機械学習の活用

 

ユーザーのプライバシー

行き過ぎないアクティビティーベースの検出を重視

 

展開の複雑さ

簡単に展開可能(多くの場合、スタンドアロンの脅威対策ソリューションとして)

MDM

主な目的

組織のデバイス、構成、使用ポリシーの制御


対象範囲

デバイスの登録、アプリの配布、リモート ワイプの管理


データ監視

リソースへのアクセスの監視と暗号化ポリシーの施行


脅威検出

通常は限定的(脅威検出には追加のレイヤーが必要)

 

ユーザーのプライバシー

ユーザーのアプリ、通話、テキストのより詳細な可視化が可能

 

展開の複雑さ

大量のプロビジョニングが必要(特にBYODの場合)

組織でMTDを導入するためのベスト プラクティス

MTDの導入を決定する際は、統合を確実に成功させるための慎重な戦略が必要です。組織のソーシャル メディア チャネルやコミュニケーション プラットフォームのセキュリティを確保するうえでは、テクノロジーの導入だけでなく、人的要素や社内文化のレディネスも重要な役割を果たします。

  • 包括的なリスク評価:初期監査と定期監査を実施することで、リスクの高い領域を特定し、それに応じてMTDを調整します。
  • 従業員教育:不審なリンクや異常な電話を見分ける方法についての認識を高め、警戒心を強化することが重要です。
  • シームレスな統合:オンプレミス ネットワークとクラウド環境をMTDソリューションと連携させ、死角の発生を防ぎます。
  • 定期的なポリシーの更新:アプリのインストールに関する内部ルールを積極的に改善し、新たな脆弱性が持ち込まれるリスクを軽減します。
  • ゼロトラスト アーキテクチャーの導入:「決して信頼せず、常に検証する」という原則を実装し、いかなるユーザーやデバイスにもデフォルトで完全な信頼が与えられないようにします。

モバイル脅威防御の未来

組織においても個人においてもコネクテッド サービスへの依存が高まるなか、モバイル脅威防御の分野は大きな進化を遂げようとしています。今後数年間で、組織は人工知能(AI)を全面的に導入して異常のフィルタリング精度を向上させ、高度なリスク スコアリングを通じて緩和戦略を自動化できるようになることが予想されます。同時に、リモート ワークやハイブリッド ワークの流れが世界的に続くなかで、クラウドベースの柔軟なMTDサービスの重要性は高まっていきます。

新たなテクノロジーによって、接続が拡大されていくだけでなく、脅威への対応速度も変革を遂げていきます。セキュリティ インシデントを防ぐには疑わしいアクティビティーを停止する決定を瞬時に行う必要があるため、速度は極めて重要です。従来のゲーティング手順は、適応型インテリジェンスや機械学習が中心にはなっていないため、このような速度を維持できない可能性があります。こうしたテクノロジーが成熟していくなか、MTDのソフトウェアやサービスでは、脅威インテリジェンス プロバイダーとの協力を通じて共有される情報が活用されるようになっていきます。

プライバシーに対するユーザーの期待は、MTDの設計にも大きく影響します。ユーザーは、不審なコンテンツを調べる際に個人の自律性を侵害する可能性のあるソリューションに懸念を抱いています。信頼関係の構築が不可欠であり、ベンダーも組織も個人データのログを過剰に取得することなく脅威から防御できることを証明する必要があります。このアプローチによって、テクノロジーは世界のプライバシー規制に則ったものになり、その過程でユーザーによる受容が促進されます。

モバイル保護におけるゼロトラスト セキュリティの役割

現代の脅威対策に関する議論においては、ゼロトラスト セキュリティの原則が注目を集めています。これは主に、境界ベースのアプローチが効力を失いつつあるためです。従来、ネットワークは暗黙の信頼を前提に構築されていましたが、モバイル ソリューションやクラウド ソリューションの登場により、その前提は大きく覆っています。本質的に信頼できるデバイスはないと考え、組織の資産にアクセスするにはすべての要求を認証する必要があります。これはMTDとまったく同じ考え方であり、厳格な検証を実施することで権限のない者のアクセスを防ぐことができます。

ゼロトラスト アーキテクチャーでは、内部トラフィックであっても、MTDで義務付けられている保護対策を回避できません。すべてのユーザー、サービス、アプリケーションは継続的に検証されるため、侵入者が気付かれずにリソースにアクセスできる可能性は最小限に抑えられます。この統合的なアプローチによって、従来のセキュリティの死角を突く高度な脅威に直面した際のレジリエンスも強化されます。MTDとゼロトラストを統合することで、モバイル ワーカーの個人データやビジネス リソースを不正アクセスから保護しながら、コラボレーションやイノベーションが可能な環境を構築できます。

 

ZTNAの仕組み

 

ZscalerのMTD

Zscalerは、Zscaler Client Connectorとクラウド型のサイバー脅威対策を通じてモバイル脅威防御(MTD)の機能を拡張し、接続元の場所を問わず、ユーザー、デバイス、アプリケーションにリアルタイムのセキュリティを提供します。高度な脅威インテリジェンス、完全なTLS/SSLインスペクション、ゼロトラストの原則を組み合わせることで、モバイル環境全体でフィッシング攻撃、悪意のあるアプリ、不正なネットワークの検出と阻止を可能にします。

Zscalerは軽量エージェントとクラウド ネイティブ アーキテクチャーにより、パフォーマンスやユーザーのプライバシーを損なうことなくシームレスな保護を提供します。進化するモバイル脅威に対するスケーラブルで適応能力に優れた防御を求める組織にとって、理想的な選択肢となります。

Zscalerによって、組織は以下のことを実現できます。

  • リアルタイムの脅威検出:AIを活用した分析と完全なトラフィック検査により、モバイル デバイスで脅威を検出します。
  • ラテラル ムーブメントの防止:ゼロトラスト セグメンテーションと継続的なアクセス検証により、デバイスの侵害を防止します。
  • 保存データと転送中データの保護:モバイル向けに最適化された統合型の情報漏洩防止(DLP)とCASB機能により、データを保護します。
  • モバイル セキュリティの運用簡素化:統合型のクラウド プラットフォームにより、従来のVPNやハードウェアの利用を減らします。

ゼロトラストでアーキテクチャーを変革

モバイル ワーカーの保護について検討されている場合は、デモを依頼して、Zscalerでモバイル脅威防御の戦略を強化する方法をご確認ください。

おすすめのリソース

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よくある質問

よくある質問

モバイル防御はマルウェアやフィッシングなどの脅威からデバイスを保護する一方、境界防御では特定の場所やネットワークを保護します。両者はセキュリティの異なる側面に対応していますが、互いに補完し合うことで包括的な保護を実現します。

はい。MTDは、悪意のあるアプリ、ネットワーク攻撃、フィッシングなど、モバイル固有の最新の脅威に対する高度な保護を提供します。これは、従来のウイルス対策ソリューションにはない機能です。MTDは、モバイル環境に特有の脆弱性に対処できるように設計されています。

MTDはモバイル デバイスに対する脅威の検出と防止に重点を置く一方、EMMはデバイス ポリシー、構成、セキュリティを管理します。MTDとEMMを組み合わせることで、組織向けの堅牢なモバイル管理とセキュリティ エコシステムを実現できます。